ピートはコンビニでタバコと、そして缶ビールを3本買って河川敷に向かった。
ピートの深夜のお決まりはこの河川敷に行く事だ。
何をやっているかはわからないが、アノンははピートがこの時間にどこかでなにかをしている事は知っていた。
知ってはいたが特に関心はなく、突っ込んで話をする事なんて当然なかった。
そして日の出前には家に帰る事にしてる。
朝7時にはマサル出社するし、その30分後にはミェーは学校にいく。
ピートは誰とも会わないように日の出前に帰る。
つまり、基本的にはピートに会うのはアノンだけなのだ。
アノンはとても美しい母親だった。
アノンには信じている事がある。
平穏に暮らすという事はなによりもリラックスしている事が大切であり、嘘がない事、自分に自信があるという事がリラックスしている状態であり、そして平穏に暮らしたい。平穏に暮らす事が様々な障害から身をかわす事ができ、常にリラックスしている状態で居られるのだと。
しかし、アノンには嘘がある。
隠すべき真実があるのだ。
今の彼女は到底自らが望む理想の状態とはかけ離れていた。
ピートの事は家族にも、近所にも秘密にしなければいけなかった。
それは意図的に隠そうと思っていたのではなく、時間を重ねるごとに自然と、隠さなければいけないという思いが湧き上がった。
ピートの存在はアノンを平穏から遠ざける存在だった。
アノンはピートを隠す事で平穏を手に入れようとしていた。
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