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執筆者の写真安倍大智

意味と無意味のあわいで遊ぶ|新国誠一という詩人

こんにちは、あしたのもと アベです。

化学調味料を「隠し味」って言われるとさすがにもやっとしますよね。


それはさておき、コンポエです。

前回のブログを読んでいない方のためにざっと説明します。


コンポエ

コンクリート・ポエトリーのことで、文学と美術の境界にあるとされる詩の一種。壁や物に直接詩を書いたり紙面に文字をちりばめるように配置したりすることで、詩の領域を「言葉の意味」よりも広い部分まで拡張している。具体詩と訳される。アベは8年くらい興味があったのに何も知らないので勉強を始めた。

やっぱり面白いです。それ見たことかと。言いたくなるくらいに面白い。コンクリート・ポエトリー。

先日購入した本を読み始めています。まず読んでいるのは『新国誠一 詩集』(思潮社・現代詩文庫243)。新国誠一(にいくに・せいいち)は1925年仙台生まれの詩人で、1962年に上京するまで1人で「コンクリート・ポエトリー的な視るための詩」を発表してました。コンクリート・ポエトリー運動の存在を知らずに(!!)。その後は水を得た魚って感じで1977年に他界するまで世界水準で活動しまくったのだそうです。

こういう天才逸話が大好きなアベのハートに突き刺さりました。仙台で、自分がおもしろいと思う詩を作っていたら、それが実は世界的な運動の成果に酷似していた!っていう。しかも新国はそこで他に埋もれるのではなく、日本語でそれをすることで固有性を維持するんですよね。すばらしいです。

で、今回の気づきの中で1番大きかったのは詩の体を成してるやつもおもしろいということです。

詩集が年代順になっているので仙台時代の初期作品から見ることになるんですが、その頃はちゃんとした詩の形してるんです。縦書きで並んで、意味を成しています。一節だけ抜き出してみます。横書きになってしまいますが。


わる ひろげる くだく まきこむ

なげこむかきまわすとける

よるひる よる ひる よるひる よる

ひるよる ひる よる よるよる よる

おちる つきささるかがむ もぐりこむ

うめこまれるパ


(後略)


新国誠一『作品パ』より一部抜粋


いい...

こういう形で文の形を成しているものにも、リズム感や言葉に対する姿勢みたいなものが垣間見えてとてもおもしろいです。

たぶんそれが新国の特徴なのではと思います。彼は言葉の意味をあまり信頼していないのではないでしょうか。音のリズムとか、見た目とか、意味以外の部分を可視化することで、意味から離れて行くような詩。でもそれでも逃れられない意味との関係をコントロールして、ギリギリのバランスで遊んでいる。

その辺りは松本隆、敬愛する井上陽水、崇拝する種田山頭火にも通じる、いわゆるアベ用の感性なのです。


これは、後のより視覚に振った作品を視る上でとても重要なポイントかと思います。通常の文章のようには読むことができない詩作品に出会った時、人はまず、これは読むの?と考えるはずです。その問いには、「必ずしも読む必要はない」と答えることができるでしょう。そもそも「読む」と「視る」のあわいをウロウロしているような作品であり、そのあわいに魅力が山ほど潜んでいると私は考えます。


しばらくコンポエ話を続けたいと思います。


また土曜日に!


新中野製作所

安倍大智

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