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執筆者の写真安倍大智

不気味の谷に片足をつっこむ

こんにちは、アベです。

趣味は保湿です。


人間とアンドロイドの間にあるという「不気味の谷」

どんなに精巧でリアルなアンドロイドを作ってもどうしても何か違和感...という時に使われる言葉です。


今日は人間界サイドから不気味の谷に入っちゃってる人を見つけたのでその話です。

ぶっちゃけMattさんのことです。


ロボット技術、AI技術の発展は目覚しく、それに伴ってアンドロイドの技術も物凄い勢いで進歩している模様です。

3年前の話ですが、市民権が認められたアンドロイドもいます。

AI開発者のデイビット・ハンソン(David Hanson)によって開発されたアンドロイド「ソフィア」はサウジアラビアの市民権を獲得し、国連をはじめ様々なイベントや講演会でスピーチをするなど発言権も獲得しています。


市民権を獲得しただけでなく、女性(かどうか定かではないですが、開発者は"she"を使う)のロボットが大勢の人の前で顔(と頭蓋の中身)を晒してスピーチをしたってことで、サウジアラビアの人間の女性よりも遥かに優遇されてる!というトピックでもありました。


そういうわけで、アンドロイドサイドからの不気味の谷への挑戦は、たくさんの人が取り組んでいるわけです。


で、Mattさんですけどね。

この投稿見た時は感服しました。はっきりと負けを認めました。

これを見るまでは正直難しかったです。

なるべくいろいろなものを認めていきたいダイバーシティ・アベとしては常に「生理的に無理」ってやつとの戦いなんです。論理的に認めようとする前に「無理!」っていう感情が先立って、思考停止してしまう。そうなると認めるのは難しいんです。


でもこの、徹底したサンダーバード世界を見せつけられた時に、

すっきりしました。

「Matt」という現象を思考する準備が整いました。


*この素晴らしい写真作品はMattさんの作品ではなく、GQ JAPANの企画です。

(Photos 池満広大 Kodai Ikemitsu@TRON / Styling レナード・アルセオ Leonard Arceo@SW’NG)


衣装に使っている素材の質感、背景の「本気と抜き」のバランス、ポージング、小物、左に落ちるくっきりとした影、そしてMatt。全てが完璧だと思いました。

「あ、この人あっち岸に行こうとしてんだ」

と。


人間サイドから不気味の谷に挑んでるんです。

そして、はっきり言って踏破してます。


そこからはしっかりとリスペクトを持って評価することができました。

インプラントなどの人体改造で異世界への旅に出ている人は結構見てきたんですが、別格と言いたいです。


アンドロイド技術が発展する中で人間であること、生身であることとその価値を再認識させるクリティカルな作品とも思えるし、

技術の発展によって失われるであろう選択肢をあえて選んでいくような荒唐無稽さは特筆ずべきです。

人間サイドから見た「不気味の谷」を表現した彫刻と見れば美しくすら感じられます。


これから、世界のシステムはどんどんバーチャル化していくし、今まで必要不可欠だった20世紀のインフラはWeb上のインフラに置き換えられていきます。

このご時世、外に出られない、集まれない状況の中、芸術のあり方は変わっていき、同じ空間を共有して直接見る・聞く・触る・喋る・味わう・匂うといったコミュニケーションは簡単に切り捨てられていくのかもしれません。


表層的な個性は重要性を欠き、簡単に更新することができるようになります。

自分を自分として認識すること、認識してもらうこと自体が、変革していくのでしょうか。

認識するという行程がなくなるような気がします。

そんなことを考えさせられます。


最後までお読みいただきありがとうございました。

今度は土曜日です!


新中野製作所

インフォグラフィクス、デジタルファブリケーション

安倍大智



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