こんにちは、水曜・土曜担当のアベです。
難しいことをグラフィックを使ってわかりやすく伝える「インフォグラフィクス」と、レーザーカッターや特殊印刷などを使った「デジタルファブリケーション」を中心に活動しています。急にすみません。
さて今回のブログですが、前回・前々回に引き続き国連SDGsのアイコンデザインの話です。今回で最後にしようと思います。揚げ足取りしててもしょうがないですよ。
デザイン差し替えの事実確認
前回は作業中に大変なことが発覚して、びっくりしてうまく話せてませんが、
途中でデザインが差し替えられてるっていう...事実がわかったわけです。
一度発表されたアイコンが、一部変更されたようです。
で、どちらが先なのかと思い調べてみました。
またびっくりしました。
アベの予想では、いや予想するまでもなく、イコール記号のデザインが統一されている方(ロード中みたいな表現がされている方)が変更後だと思ってました。
逆でした。前回喋ったことと逆です。前回のブログはうそです。
イコール記号のデザインシステムを統一するための変更かと思いきや、変更前が統一されいていて、変更されたことによってシステムがずれてしまったようです...残念なことです。
そうなるともう、なんで変えたの?もう。
この、ゲームなどで使われる「ロード中」の表現が相応しくないとされたの?
新しい方はもう...何?もう...意味不明だと思うけどなあ。だって中心のイコールっぽいのはイコールじゃないもんもはや。文法的に。「5」で使ってるイコールと違う形にした時点でイコール記号ではないじゃん?「イコールっぽいもの」ですらない気がしますけどね。周りの4つの3角形のせいでなおさら、イコール感が霞んでいる...じゃあなに感なんですか?なに感も出てないと思いますけどね
アイコン作りにおける「タッチ」
さて、今回アベにネチネチ言われるのはこちらの皆さんです。
「6. 水を濾過しよう」「14. 海の豊さを守ろう」「16. 平和と公正をすべての人に」
のお三方です。
この3つのアイコンのバラバラさの要因は何か、ようく観察していたらわかりました。
すごく基本的なことでした。
「タッチ」が全然違いました。
え?あだち充?って思った人、逆に鋭い。
漫画でよく言われるタッチです。その作家独特の、あるいは、その作家が採用している、描き方。
例えば、「こち亀」には無数のキャラクターが登場しますが、どんなに個性豊かでも、あの漫画の世界の中にいます。これは秋本治先生の「タッチ」が統一されているからなんです。たぶん。
逆に、「こち亀」の両津勘吉を他のジャンプ作家さんが描くコラボレーションも多々ありましたよね。
そういう場合、両津は両津なんだけど、完全に両津ではなくなります。「こち亀」の世界からは弾かれてしまいます。それは、「タッチ」が違うからです。
あだち充先生の連作にも全く同様のことが言えます。鋭い。
SDGsアイコンを使って、画像を作ってみました。
「6」「14」「16」のセレクトは、「いきもの」「水」という共通のカテゴリから比較できる組み合わせでした。
この3点だけではなく、全17種類のアイコンそれぞれに登場するモチーフの一つ一つが、どこか別人の作品のような違いがあるんですね。
角丸↔︎鋭角
特に「魚のひれは角丸、鳩の羽は鋭い角」なんです。重要です。重要なタッチの一つです。
最近は角を丸くするか否かで人格判断される時代です。
例えばMicrosoftとAppleでそこの差は如実ですよね。
Microsoftに至っては自社ブラウザに「Edge」って名付けるくらい意識してます。
角を立てる人はWindowsユーザーの疑いをかけられるので、Apple派による迫害を受けます。
Googleさんはいいとこ取りって感じかして、要領の良さを感じます。
SDGsの17種類のアイコンにはこの角丸と鋭い角が入り混じっています。
うまく使い分けられていれば批判も出ないかもしれませんが、不用意に混ぜてしまうと、バラバラした印象になってしまうということでしょう。
遠くから見たらわからない?ところがどっこい、全然違ってくるのが面白いところです。
あらゆるデザインを、そこばっかり見ていくのも面白いかもですね。
印象を操作するのはディテール
角丸鋭角の話に近いです。印象は細部に宿ります。
「6」と「14」では、水面の描き方を抽出してみました。同じ水面とは言え、「海面」と「コップの中の水」ですから描き方が違うのは当然のことです。
でも、だからこそ、統一しなければならないことがあります。それが「印象」。
お洒落になりたいのか、イカツくなりたいのか。
インドア派を演出したいのか、# 湘南乃風ファンとつながりたい のか。
そういうことです。
画像には「海面の方は荒々しく、コップの方はお洒落」と書きました。
タッチが違ってるってことです。
海面の方は、荒々しいというか、路線としてはヘタウマなんです。
あとは切り絵っぽい直線/曲線の使い方をしていると思います。整いきらない、プリミティブ(原初的)な印象を与えていると考えます。絵本的と言ってもいいかもしれません。
それに対してコップの方はフラットを地でいくスタイル。左右非対称の水面が滑らかーに揺らいでいて、整った印象を与えているんです。すっきりしてますよね。
こういった印象のコントロールをできるかどうか。これもデザイナーの手腕の見せ所だなあって、思います!
勉強になりました
このシリーズは今日で終わりです。
冒頭でも言いましたが、揚げ足取ってばかりでは生産性がないです。やなやつになるだけです。
こうして細かく作品を観察して、仕組みを考えて、ユーザーの体験を辿っていくことはいいことですが、文句ばかり言っててもしょうがないのです。
こういう過程を踏むのならば「勉強しながら」という姿勢が大事ですよね。実は第一回から気をつけていることでした。
お付き合いいただき、ありがとうございました!
*ちょっと茶化しましたが国連及びSDGsの理念に敵対するつもりはありません。あくまでデザイン面での話題として扱いました。
この3回のブログで勉強したこと
・デフォルメ/簡素化のレベルを統一しよう
どこまで情報を削るのか。情報を削った場合、グラフィックはどこまでシンプルにできるのか。他のアイコンとのバランスをうまくとって、簡素化のレベルを統一していく。できるからと言って簡素化しすぎると、そこまで簡素化できないアイコンとのバランスが崩れることがある。
・アイコンデザインの文法を大事に
同じ意味をもつ記号やシンボルは、他のアイコンでも同じ「形/大きさ/使いかた」で使う。なんとなく統一感がなくなるというだけでなく、意味が伝わらなくなってしまう可能性がある。アイコンは読み物だという意識で、ミスリード(misread / mislead)の原因にならないようにする。
・タッチを意識する
分かりやすさ、読みやすさの裏にはタッチ(作家性)がある。分かりやすければ良い、伝われば良いとしても、美学を意識することは、分かりやすさ伝わりやすさに繋がる。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
アベのブログは毎週水曜・土曜!
お楽しみに!
S.N.P. / 新中野製作所
インフォグラフィクス、デジタルファブリケーション
安倍大智
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